
さい銭箱の脇に安置された丹波焼の夫婦ガエル=兵庫県丹波篠山市今田町上小野原で
真冬だというのに、冬眠もせず、身じろぎもせず、さい銭箱のそばにたたずむ2匹のカエル。よくよく見れば陶製の置物ではないか。しかし、なぜ、神社にカエル―?
ここは兵庫県丹波篠山市今田町上小野原の小野原住吉神社。拝殿に置かれたさい銭箱の隣に鎮座する2体のカエルの置物は共に体長約30センチ、体高約20センチ、幅約25センチあり、堂々たる体躯だ。
このリアルな置物は昨年10月、カエル好きの丹波焼陶芸家、北村圭泉さん(70)が奉納したもの。北村さんは筆と墨で半紙や木の板に、絵手紙の要領で頭に浮かんだ言葉に擬人化したカエルの絵を添える作品づくりを趣味にしている。
本業では、えとの置物作りの名手でもある。カエルの置物も、えとの置物製作と同様に石こう型で造形。釉薬をかけない焼き締めで仕上げた。仕事の合間を見ながら、2年をかけて完成させた。
700年以上の歴史ある同神社では毎年、秋祭り(八幡祭)の宵宮に室町時代から伝承されてきた田楽の一種「神舞」が、同町内5集落の氏子でつくる「小野原住吉神社神舞保存会」によって奉納されている。この踊りの中にカエルのように飛び跳ねる所作があることから「蛙踊り」と呼ばれ、また、同神社の鎮守の森がヒキガエルの伏せた姿にも似ていることから「蛙の宮」の愛称がある。

「井の中の蛙(かわず)―。私のことですねん」。木の板にカエルを描いた作品を手にする丹波焼陶芸家の北村さん=兵庫県丹波篠山市今田町下立杭で
北村さんは、「歴史と格式のある素晴らしい蛙の宮を盛り上げる一つのアイテムになれば」と神社の愛称にちなんで寄贈した。「大変おこがましい行為と感じたが、氏子の皆さんに快く受け取っていただき、ありがたいかぎり」と喜んでいる。
カエルは「帰る」に通じ、昔から縁起の良い生き物として、特に旅の無事に御利益があるとされる。同神社は、「この夫婦ガエルを神社の象徴の一つとして祭っていく。参拝の際には、このカエルをなでて御利益を授かってもらえたら」と話している。
なお、夫婦ガエルが鎮座する拝殿には、勾配のきつい石段を上らないと行きつけない。くれぐれも足を滑らせ、ひっくりカエルことのないように。



























