車で人生を豊かに 59年間乗るマイカー「カローラ」 村で最初?の自家用普通車【シリーズ・昭和100年】

2026.01.17
丹波市地域地域歴史

新車で買い、今も乗り続けている愛車の初代カローラとオーナーの木下一司さん。手にしているのはカローラ50周年時に贈られた歴代カローラのミニカー=兵庫県丹波市氷上町市辺で

令和8年(2026)は、昭和元年(1926)から数えて満100年。戦後復興、高度経済成長などにおける、さまざまな出来事の中で日本が大きく発展した昭和の時代。一方、「平成」「令和」と時が流れるにつれ、古き良き時代というような懐かしさも込めて「昭和」が使われることが散見されるようになった。そこで、「楽しかった昭和」にスポットを当て、当時の“アルバム”の一部をひもといた。時代の再発見と、輝かしい未来につながることを期待して。

日産「サニー」とトヨタ「カローラ」が発売された国内における「マイカー元年」の翌年、昭和42年(1967)に購入した愛車「カローラ」を今も大切に乗り続けている木下一司さん(91)=兵庫県丹波市氷上町市辺。モデルチェンジを続けた人気車の初代型式「KE10」(1077㏄)。冷房、シートベルトは付いていない。「若い警察官に驚かれる」といたずらっぽく笑う。

戦後、氷上郡(現丹波市)内の農協や製材所が、木炭車・薪車の4トントラックを買い始めた。15歳の昭和25年、「危ないから駄目だ」と言う親の反対を押し切り、トラック助手になった。燃料の木炭を継ぎ足したり、坂道で車を押すのが役割だった。国民学校6年生が終戦の年。修学旅行がなかった。米や材木、炭などの配達で訪れた大阪、神戸が生まれて初めて見る都会。自分でどこにでも行ける自動車に強い憧れを抱いた。

19歳で運転免許を取り運送会社に就職、タクシー会社勤務を経て、金融機関の運転手に。退職後は旧車愛好家仲間と振興を深め、車で人生を豊かにした。

チョークを引いてエンジンをかける。ギアは4速。ハンドルが重く、バックミラーが小さい

昭和30年に自転車にエンジンが付いたブリヂストン「BSモーター」を買ったのが「乗り物始め」。同36年にホンダの「スーパーカブ」、翌年にマツダの「軽三輪トラック」、その翌年にマツダの軽自動車「クーペ」と中古車を乗り継いだ後、家族が乗れるセダン「カローラ」を買った。自家用普通車の購入は「村で最初か2番目くらい」。48万円ほどで購入、月給1年半分だった。タクシー運転手の経験から、車がどれほど便利なものかが身に染みており「人助けに役立つ」と、思い切った。通院する人を乗せたり、汽車賃がなくて長距離を徒歩で移動する人を拾ったこともあった。

子どもの宮参りにこの車で行ったのが良い思い出。趣味の食べ歩きと温泉旅行で25府県に赴いた。時代が下ると観光地に乗り付け「見せびらかした」。

一時期、4台の車を保有したが、「ワンオーナーで生涯乗る」と決めた愛車は手放さなかった。平成29年、「カローラ発売50周年」に際し、本社の依頼で宝塚の店舗で愛車が展示された時は「誇らしかった」。

令和8年はカローラ60周年。「私は1年遅れで買ったので、令和9年が私と愛車の60周年。そこまで乗りたい。老車と老人で、近場でゆっくりドライブを楽しみます」とほほ笑んだ。

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