播州歌舞伎

2015.01.22
丹波春秋

 多可町のベルディーホールで「中央公民館播州歌舞伎クラブ」20周年公演を観劇。江戸時代、加西市に起源を持つ播州歌舞伎は1980年代、同町の小学校がプロの「嵐獅山(あらししざん)一座」の中村和歌若(わかじゃく)師から指導を受けて以来、クラブに発展した。中学生から30歳代の若い役者は、小学生からのキャリアを持つ人ばかり。▼地べたに座布団敷きの客席を前に、中町北小歌舞伎クラブの「寿式三番叟」が華やかな衣装で演じ、おひねりが乱舞する。記念公演の出し物は「玉藻前旭袂 三切道春館(たまものまえあさひのたもとさんのきりみちはるやかた)の段」。悪者の皇子の使者に、手塩にかけた娘の首を討たれた母、萩の方がよよと泣き崩れる。▼役者は全員女性で、男役も偉丈夫にこなす。以前観た南会津の桧枝岐(ひのえまた)歌舞伎のような泥臭さを想像していたが、洗練された舞台で義太夫節に合わせた萩の方は浄瑠璃人形のように細やかな仕草。▼終幕後、萩の方役の座代表、山根加織さんが「和歌若師のただ言われる通りに動いてきたが、高齢の師の身体が不自由になられてからは、自分達で考え話し合って芸を磨いていかなければと決心した」と挨拶し、一層の支援を訴えた。▼地域の伝統を連綿と引き継ぐ“地歌舞伎”は全国各地に100カ所以上残る。歌舞伎に限らずこうした文化遺産へのバックアップを、政府の地方創生の戦略に加えてほしい。(E)

 

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