歩き方

2015.05.23
丹波春秋

 吉田松陰の妹を主人公にした大河ドラマ「花燃ゆ」を見ていて、感心することがある。『昔の人は、よく歩いたな』と思うのだ。若き志士たちがこともなげに京へ、江戸へと出向く。峠をいくつも越え、険しい道を歩いたろうと思うと、敬服する。▼「歩き方は文化によって異なる」という(斎藤孝氏『身体感覚を取り戻す』)。国や地域によって歩き方は異なる。日本古来の歩き方は、膝を曲げるのが大きな特色だった。▼同書には、下駄をはいた和服姿の女性が歩いている姿を横から撮った写真がある。両膝が見事に「くの字」に曲がっている。不安定な下駄で素早く歩くために、膝を曲げ、柔軟にすることで、衝撃を膝で吸収し、上半身を安定させるのだという。起伏の激しい土地を上が

ったり、下りたりするのにも、膝を曲げることは理にかなっていた。▼膝を曲げるには重心が低い方がいい。そのためには足が短い方が都合よく、「大正の頃までは、胴長短足が人の体の『理想』だった」(多田道太郎氏『からだの日本文化』)。▼学校健診でおなじみだった座高測定が廃止されることになった。座高の測定は、胴長短足の測定でもあった。座高の数値をめぐり、友達の間でからかいあったものだ。胴長短足は日本人の理想の体だったと当時、知っていたならば、胸を張ったろうに。(Y)

 

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