「培根達枝」

2015.06.06
丹波春秋

 4日付の「丹波こども新聞」に掲載された篠山小学校には、校訓の「培根達枝(ばいこんたっし)」の文字を刻んだ立派な石碑が校門そばに立っている。明治8年の建立で、揮ごうしたのは元篠山小学校長の亘理(わたり)直方。東京高等師範学校で教べんを執った倫理教育学者、亘理章三郎の父親だ。▼「達枝」は「枝に達す」と読んでしまいそうだが、正しくは「枝を達す」で、枝を発達せしめるという意味。章三郎は、「根は小学教育の時代で、枝は大学教育の時代に相当する。根本の初等教育に培い、これを基としてさらにその上に高等教育を発達せしめる」というのが、「培根達枝」の本義とした。▼章三郎は、「培根」期の幼少時代、祖父から読書や修身などの訓育を受けた。祖父や父親にしばしば山野に連れ出され、身体をきたえたという。後年に出した著書「試験と修養」では、教養や人徳の進歩を問う前に試験の成績を問う教育界の風潮に苦言を呈している。▼察するに、勉強はもちろん大切だが、勉強と合わせて心を磨き、体もきたえる全人格的な教育こそが何よりも大切と考えたのだろう。章三郎と交友のあった柔道家の嘉納治五郎は、章三郎について孔子の教育法を深く学んだとしている。▼篠山小に石碑が建ってから140年。今も新しい言葉だ。(Y)

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