「コメンジャコ」という魚をご存じだろうか―。答えは「メダカ」。5日付の本紙篠山版に載っていた。大芋小学校で行われたメダカの学習会で、講師に招かれた長尾勝美さんが「私は小さい頃、メダカのことを『コメンジャコ』と呼んでいた」という記事が載った。▼国語学者の金田一春彦氏によると、生きものの中で方言異名がもっとも多いのは、メダカだという。何でも1939年に久留米市の研究家が出した「目高考」という謄写版の小冊子には、3069種類の異名が記されていたという。▼メダカが多く生息し、子どもたちの絶好の遊び相手だったことが豊富な方言の理由であろうが、それ以外にもそれぞれの地域が一つの小宇宙として成り立っていたことも理由であろう。方言は、限られた小宇宙の中で通用する言葉であり、その小宇宙から一歩外に出ると、通用しない。そんなローカルな言葉だ。▼しかし、近代化とともに小宇宙は崩れ、どこでも通用する共通の言葉が流入し、市民権を得て、方言の継承は途絶えてしまった。それは、方言に代表されるその地域独自のローカル性の希薄化でもある。▼丹波、篠山両市で今、「地方創生」の論議が進み、地域の将来像を模索しているが、地方創生のカギは、ローカル性の再認識と再構築かもしれない。(Y)