「日本のいちばん長い日」再び

2015.09.10
丹波春秋

 映画「日本のいちばん長い日」(3日号本欄)で再び。新作(原田眞人監督)にはなく、旧作(1967年、岡本喜八監督)で筆者の胸を突き刺した場面。8月14日の深夜、天皇の玉音放送録音のさ中、房総沖に現れた敵艦隊に向かって埼玉県の児玉基地から特攻機が飛び立つ。▼子供も含め大勢の町民が続々と集まり、日の丸の旗を手に「若い血潮の予科練のー」と歌いながら36機を送り出す。出発前、 指揮官(伊藤雄之助)の「特別のはからいで町民と親しく」交わり、お守りをもらう者、差し入れの握り飯を嬉しそうに頬張る者らが、しかし曇った表情も見せながら機上の人となる。▼玉音放送のヤマ場、 宮城や官邸、陸軍省内、叛乱を企てる将校らの動きが次々にカットバックで映し出される合間を縫って、幾度も幾度も登場する操縦席の特攻隊員。▼明けて15日正午前、まだ内容も知らぬ児玉町民らの整列を背に玉音放送のラジオの前で直立する伊藤雄之助。飛び立つ隊員を見送り続けてきた彼の眼はカッと開き、無言の顔が何よりも雄弁だ。▼翌日朝に自決した特攻の産みの親大西瀧治郎 (丹波出身)も、恐らく同じ思いの顔だったかと推測するが、映画は新旧作とも「特攻をあと2千万つぎ込めば必ず勝つ」と戦争続行を訴える場面のみだったのは、腑に落ちなかった。(E)

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