半島の絶壁の上に降りてきた空飛ぶ円盤のような建物が現代美術館。くらげのような何本もの白い足を頂上で束ねたドームを、光あふれる内側から見上げると天使たちが悠然と空を舞っている。これが大聖堂。▼「ブラジルモダン建築の父」と呼ばれ、首都ブラジリアの多数の建築物の設計を手がけたオスカー・ニーマイヤー展を先月、東京で観た。3年前に105歳で他界した彼は元共産党員で、軍事政権下のブラジルからパリに亡命した時期もあるが、復帰して99歳で秘書の女性と再婚。「完ぺきな女体ほど美しいものはない」が持論だったとか。▼模型や写真の作品群に魅せられながら連想したのが、「建築費がかかり過ぎる」と採用中止になったザハ・ハディド女史の新国立競技場の設計案。「なるほど、今は曲線が潮流」と再認識させられた。ただ、地下鉄が錯そうする外苑前の狭い場所に鎮座する完成予想図は、曲線のやさしさよりも威圧感におののく。▼五輪ではエンブレムのデザインも使用中止になった。こちらは直線が目立って、16年リオ五輪のものなどに比べると、盗用疑惑以前にセンスの古めかしさがひっかかる。▼コンペやり直しの両デザインとも、誘致の際に世界の心をつかんだ日本のおもてなしや簡素な精神がにじみ出るものを期待する。(E)