エチオピアでゲラダヒヒと共に暮らした河合雅雄氏によると、彼らは30種類の音声を色々組み合わせ、仲間同士ひっきりなしに声をかけ合う。▼ユニット(1夫多妻の家族的な単位)から離れて浮気しようとするメスがいて、リーダーのオスがそれを連れ戻しに行く時など、表情や身ぶり手ぶりも交え、雌雄が色んな発声でやりとりするので、「ほとんど言語コミュニケーションが成立していると思うくらい」(立花隆氏が河合氏から聞いた立花著「サル学の現在」)。▼こういう場合、マントヒヒならオスがメスに吼えついて威嚇し、暴力的に連れ戻すが、ゲラダヒヒはひたすらなだめすかして説得するという。▼ゲラダヒヒは、複数のユニットがいくつか集まって作る「バンド」という群れの中でも、ユニット同士が全く対等。また複数のバンドが一時的に合流することがあっても喧嘩は起きず、縄張りも全くない。「この点、マントヒヒは力による支配でユニットを統合していく社会なので、音声コミュニケーションはずっと貧しい。一方、平和的なゲラダヒヒは、音声に力を入れることになる」(河合)。「縄張り根性で闘争ばかりするのでなく、平和共存こそが社会を高度に発展させるのでしょうか」(立花)。▼でも、音声能力を抜群に発展させたもう1種の霊長類はどうなっているの?(E)