朝ドラ「あさが来た」に、日本女子大学校の校長を務めた春日出身の井上秀をモデルにしていると思われる人物が、主人公の娘の友達として登場した。▼秀はスケールの大きな女史だったが、青垣出身の夫、雅二も型破りの人物だったようだ。若くして海外に出て、マレー半島でゴムの栽培を手がけ、日本人のブラジル移民を推進するなど、一生を海外開拓にかけたという。▼雅二が亡くなる3年前に出した本の中に夫婦生活を振り返った記述がある。夫婦ともに飛び回り、すれ違いの期間が長かったが、妻は女子教育、自分は大日本建設に尽力し、「たがいに身を忘れて使命に邁進し得たことは何たる至幸であるか」とした。46年の夫婦生活は「感謝の生活」「一心同体の生活」であり、それぞれ百歳まで生きて「夫婦の範を後に示さん」と豪語した。▼「愛とは、相手に変わることを要求せず、相手をありのままに受け容れることだ」。イタリアの有名な劇作家の言葉らしいが、秀と雅二の夫婦愛はこの言葉そのままのようだ。たがいに束縛することなく、尊重し合い、相手の存在をそのまま受け容れた。▼人としての器を思う。相手に変わるよう求めるのは、自分の器に合うようにすること。二人はともに器が大きかったから、たがいを受け容れられたのでなかろうか。(Y)