米大統領予備選挙。共和党はトランプ氏が独走し、民主はサンダース氏がなお追いかけてはいるが、クリントン氏でほぼ見通しがついてきた。改めて浮かび上がるのは、米国の貧困だ。▼派手なトランプは演出を計算し尽くしている。「イスラム教徒の入国を拒否」、「メキシコ国境に壁を構築」の発言は、「移民のために仕事を奪われている」と考える白人の貧困層の絶大な支持を得た。甚だ過激ながら、「怒りはアメリカに向けられている」という言葉は的を射ている。▼サンダースは民主党と統一会派を組んでいたものの元は無所属の上院議員。米国内には根付いていない「民主社会主義」者を名乗り、大企業の寄付を受けず小口の献金を百億円以上集めた。74歳なのに支持者は圧倒的に若者が多い。▼世界一の経済大国なのに富の大半がひと握りの富裕層に集中し、多くの国民は公的保険も受けられず、大学に行ってもローンの返済に追われている。左右両候補の健闘は、国民大衆が既存の政治に愛想をつかした結果だ。▼長年政権に関わって実績のあるクリントンこそ、問題を地道に解決する能力を持つはずなのだが、女性や非白人層に人気はあるものの、言説がいささかご都合主義的で、いまひとつ信頼を得ていないのが難点だ。ここに米国政治の貧困まで見えて来る。(E)