山南町でプリザーブドフラワーの事業を展開している大地農園の大地社長から以前、興味深い話を聞いた。戦前、大阪で花屋をしていたという先代は、「戦争があっても、どんなひどい状況にあっても、一輪の花がほしいという人がいる」と話していたという。▼花は空腹を満たしてくれない。寒さをしのいでもくれない。暮らす上でどうしても必要とは言いづらいが、人の心にとっては欠かせない必需品だというのだ。▼心の必需品は花に限らない。夏目漱石は、とかく住みにくい人の世を少しでも住みやすくするために詩や絵があり、芸術文化は人の心を豊かにすると言った。だからこそ、大地社長も「どんな時代にあろうとも、人は、感動や安らぎを与えてくれる文化を求めている」と言い、「文化は、まちづくりの原動力。文化で地域を元気に」と提唱されている。▼元文化庁長官の河合隼雄氏も、文化は社会や経済のあり方にも影響を与えるとし、「文化力」を唱えられ、「文化で日本を元気にしよう」と呼びかけられた。そんな河合氏の故郷、篠山で9月17日から恒例のアートフェスティバルが始まった。▼伝統的な生活文化をとどめる市内河原町の町家約40軒で、多彩な分野の作家60人ほどが出展をするイベント。篠山に元気を注ぎ込むに違いない。(Y)