書の楽しみを広げたい
書道塾「氷上書院」を主宰する。
早稲田大学第一法学部を卒業する時に父が急死。民間会社に内定したものの、実家の母を支えるために帰郷。近畿大学の通信教育部で教員免許を取得し、豊岡の高校教員に内定していたが、家庭の事情でかなわず、地元の中学校で社会科教諭になった。
「卓球部の顧問として生徒の指導に明け暮れていた30歳のころ、中学校に出入りしていた年輩の書道の先生との出会いがその後の人生に大きな影響を与えた」と振り返る。勤務を終えたあと自宅に通い、指導を受けた。「当時は若かったし、書に興味はなかったが、だんだんと面白みがわいてきた」という。その後、隷書(れいしょ)や篆書(てんしょ)、仮名(かな)などをそれぞれの道に精通する書家に習った。隷書が得意分野。
定年を数年残して退職し、「氷上書院」を設立。これまでかかわった人は、300人近くに上る。習作展は25回目。「みなさんから色んなことを教わることも多くあり、一緒に楽しんでいる」と話す。
「書を通じて社会に少しでも貢献できれば」という願いから、丹波書の会会長として、丹波席書大会や丹波の森新春書初め展の運営や審査にもあたる。
数年前に大病を患ったが克服。詩人の高村光太郎の書にある「甘酸是人生」がモットー。人生は甘さ半分、酸っぱさが半分。「生きがいがあったおかげで、色々な壁も乗り越えられた。習作展は30回が目標。来年の課題も考えていますよ」とほほ笑む。囲碁と水泳が趣味。「頭を使い、体力を維持しながら書も楽しみたい。書は実用的で、日々の生活にも役立つ。おすすめします」。81歳。