人物伝、随筆など15冊出版
浄土宗寺院の住職。人物伝や随筆集、講話録など、これまでに15冊の本を出した。「20歳の頃、新宿の易者に『晩年、物書きになる』と言われた。そのときは『えー』と思ったんですが」とほほえむ。
篠山市南矢代の出身。篠山鳳鳴高校を卒業後、東京で働き、1980年に帰郷。3年後、父親を継ぎ、西楽寺住職となった。88年、西楽寺の歴史などをまとめた本を出した。この年、儒学者の小島省斎の名言を取り上げ、解説を加えた語録集も出した。「苦学して柏原藩儒となり、柏原藩の向かうべき道を照らしだした省斎。その言葉は今に伝えるべき至言だと思った」。2冊の本を出したのがその後の始まりだった。
人物伝では、数多くの著作を残した郷土史家の松井拳堂、丹波布復興の立役者でありながら歴史の隅に追いやられた金子貫道についてまとめた本がある。聞き手から請われて出した自身の講話録もある。
2004年、妻が多発性脳腫瘍のため56歳で死去。四十九日法要にあわせ、90日間の介護日誌をまとめた本を出した。七回忌には随筆集『贅言に候』を出版。「妻が亡くなり、うせた気力を喚起するため1日1編の文章を書くことを自分に課した」。その文章を取捨選択し、1冊の本に編んだ。
文章の意義を説いた言葉「文章は経国の大業にして不朽の盛事なり」が胸中にあるのも本を出す動機になっているが、「妻と3人の孫が視野にある」という。「妻に対して自分の現状を伝えたいという思い、孫が一定の年齢になった時、祖父はどんな人物だったのかを知る手がかりになればという思い。それが本を出す原動力になっている」と話す。69歳。