1970年代、県立丹波文化会館でしばしば結婚式が行われた。この会館での結婚式には一つの特徴があった。式の中で、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有する…」と、日本国憲法24条を朗読したことだ。▼結婚は、当事者が同意するだけで成立するとしたこの条文は、本人の気持ちを無視して親が勝手に結婚相手を決めるという過去の封建制に一線を画したものだった。明治時代の小説家、泉鏡花が「古来我が国の婚礼は、愛のためにせずして社会のためにす」と批判したように、かつての結婚は、社会の維持に重きが置かれた。▼これに対して憲法24条は、個人の意思に重きを置いた。この画期的な転換に、私たちは一枚のカードをひいた。それは、将来、晩婚化や非婚化が進むことになるかもしれないという予言のカードだ。▼1組の男女を結婚へと結びつけたかつての糸には、2人の愛情はもちろん、家の存続や世間体という社会的圧力などがあった。しかし今は圧力が弱まり、愛情だけという細い糸になり、晩婚化を招き入れた。▼県は先ごろ、独身男女に出会いの場を提供するサポートセンターを開設した。少子対策の一環だ。行政が乗り出すことに鏡花の言葉が頭をよぎるが、出生率1.25という現実を見たとき、「やむなし」とも思える。(Y)