陶歴40年、窯変を追究
「古丹波を踏襲した造形に、釉薬によって華やかで現代的な感覚を加えた作品は国内外で高く評価。海外の陶磁器展への出展や北欧へ研究員として派遣されるなど国際的に活躍し、大学教授として後進の育成にも尽力した」などと、今年度、兵庫県が5人に贈った「文化賞」を受賞した。
陶歴40年。薪窯の中で灰と釉薬が反応し合うことで器の表面に現れる色彩と模様「窯変」を追究し続けている。創作意欲を湧き立たせているのは日課としている朝の散歩。「作品作りのヒントはすべて自然の中にある。山腹にたなびく朝もや、木々の色づき、空の色や雲の流れなどから着想を得ています」。
「省三窯」2代目。関西学院大学在学中、古美術研究クラブに所属し、全国の神社仏閣をめぐり、仏像や建造物など国宝美術に触れた。「ホンモノは幾年を経ようとも輝きを失わない」と感動を覚え、卒業後は迷うことなく伝統の丹波焼を作り続ける父の窯場へ飛び込んだ。「父は寡黙な人。丁寧に教えてくれることなど皆無で、ろくろ作業を横目で見つつ、窯焚きを何百回と共にしながら、まさしく技は盗み取った」。
1991年、36歳の時、日本伝統工芸展に出品した大皿が「高松宮記念賞」を受賞。「茶の湯の造形展」では、2007年と11年の2度、大賞に輝いた。また、40代に2人の弟子を育て、50歳から11年間、神戸芸術工科大の教授として学生たちに陶芸のいろはを伝えた。
「自分の好きなことをやってきて、そのことを評価してもらえるということは本当に幸せなこと。陶芸ができる環境を築いてくれた両親にも感謝したい」。62歳。