市の文化活動リード
合唱指揮者 笹倉強 (ささくら・つよし) さん(埼玉県新座市在住)
1930年 (昭和7年) 西脇市生まれ。 柏原高、 武蔵野音大声楽科卒業。 城北高 (東京・埼玉) 教諭、 武蔵野音大、 東京学芸大非常勤講師を歴任。日本合唱指揮者協会会員、「ブルク室内合唱団」主宰。
長年、 非常勤講師として都内の大学の合唱指導をし、 8年前に引退後、 様々な方面から活動の誘いを受けた。 なかでも新座市文化協会長として音楽だけでなく、 市民の文化活動をリードする。 今年7月末には、 新座市民会館大ホールでベートーベンの 「第九」 演奏会を終えた。 「40年近くやってきたベートーベンの第九の指揮は、 これが最後でしょう。 その集大成と思って頑張りました」 と、 解放感と充実感に満たされた様子。 でも、 「合唱の指揮者は舞台では全体の指揮を別の人に譲りますから、 最後はちょっと寂しい気持も」。 合唱指導は根気がいるという。 戦中に少年期を過ごした世代としては、 日本人のガッツが失われていくことが悲しい。 「個性を強調する時代になって、 だんだん難しくなってきましたね。 人の声を聴いてみんなで合わせるということができなくなってきた。 物質的に豊かになるほど、 人は失うものが大きいと思いますよ」。 旧制中学に入ってすぐ、 終戦で新制高校に変わり、 自宅のある西脇から6年間、 柏原に通った。 「今の自分は当時の環境が作ったと言って過言ではないでしょうね」。 音楽のクラブ活動で現在86歳の橋本喬雄先生に指導を受けた。 当時の仲間たちの絆は強い。 今春、 「橋本会」 に30余人が集まり、 先生がピアノを弾いた。 先輩の後を追って武蔵野音楽大学へ進学。 私立の男子高校に就職し、 合唱部を発足させ、 10年後に全国コンクールで第3位に入賞。 「音楽だけやっていればいいのではない」 という学長の言葉に動かされ、 掃除や挨拶など生活指導にも力を入れた。 「今もそのくせが抜けなくて、 中高年の合唱指導でもつい説教じみ、 団員からうるさがられている」 と苦笑。 息子の一人はプロのバリトン歌手、 もうひとりは音楽教師。 ふる里へは年に3回は帰る。
(上 高子)