JA全農兵庫県本部長 田中 豊さん

2003.02.13
たんばのひと

安心、安全な食品を
JA全農兵庫県本部長 田中 豊さん (加古川市在住)
 
 (たなか・ゆたか) 1943年 (昭和18年) 生まれ。 柏原町大新屋出身。 62年に篠山農高氷上分校卒業。 県経済連柏原出張所を振り出しに畜産部長、 常務などを歴任。 全国組織の全農と合併後、 昨年7月から本部長。
 
 農協を通じて、 生産物の流通販売を行う全国組織、 JA全農兵庫県本部長として職員460人のトップに立つ。 「安全・安心な食品を消費者のみなさんに提供することに尽きる。 自己判断は危険。 常に法律に照らし合わせて考えてほしい」 と職員に呼びかける。
 全農兵庫の前身、 県経済連に就職以来、 この道一筋。 なかでも畜産関係の仕事が長かった。 県内農業生産物のうち、 米、 園芸、 畜産がそれぞれ3割ずつを占めるが、 職員のときに一番苦労したのが牛肉輸入自由化への対応。
 「県内には但馬牛、 神戸肉という全国ブランドがあり、 兵庫県の畜産がどうなっていくのかと頭を悩ました」 と10数年前を振り返る。 畜産課長の時には、 神戸肉のブランドを守るため格付け、 認定を行う神戸肉流通推進協議会を発足させ、 全国300の食肉店を指定登録し、 審査や販売実績を加味した 「神戸肉証」 を発行している。
 「BSE (狂牛病) の問題が起きた時にも、 この取り組みが役に立ち、 国産牛、 なかでも兵庫県の黒毛和牛は安心という消費者の信頼を得られたと思う。 市場価格も上昇している」 と自信をのぞかせる。
 農業情勢がめまぐるしく変化するなかで、 組織をあげて生産工程記帳運動を展開しており、 使用した農薬や肥料など生産物の栽培履歴を生産者に記入してもらう。 「食品の安全性が問われる中で、 消費者が安心して買えるようなシステムの構築が急務」 という。
 本部長のほかにもう一つの顔はエーコープ兵庫代表取締役社長。 県下に直営11店舗を持ち、 農協Aコープの店にも商品を卸している。 「安全な食品の供給は、 スーパー経営に携わってから、 より一層気を配るようになった」 と話す。
 厳しい毎日の勤めのなかで、 たまにふるさとに帰るとほっとする。 一人っ子で、 小さいときから、 農業を手伝い、 「勉強よりも仕事」 という環境に育った。 「今になっては、 高校で学んだ開拓者精神が生かされたのかなと思う」 とはにかむ。

(臼井 学)

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