サント・アン社長 塚口肇さん

2002.05.16
たんばのひと

人のつながり大切に
サント・アン社長 塚口肇さん  (三田市在住)
 
 神戸電鉄の横山駅に降り立つとイギリスの田園風の建物が目に入る。 15年の間に 「三田で 『サント・アン』 を知らない人はない」 というほどの有名店に成長した。 大学時代の下宿先が洋菓子店だったことが、 この業界に入るきっかけに。
 「大学を卒業してもサラリーマンも勤まりそうにないし、 技術があれば小さくても城をもてるのでは」 と思い、 2年で中退して、 洋菓子店へ。
 その店には十年いたが、 業界の重鎮で、 西宮の洋菓子店経営者の津曲 (つまがり) 孝さんのアドバイスが独立に大きい影響を与えた。 経営の方針は、 「品質にこだわり、 規模の拡大はしない」。 「規模を広げていくと、 どうしても品質が落ちる。 口コミや人のつながりを大切にしたい。 紹介してもらえる店に」 と話す。 店に看板は無く、 広告で宣伝もしない。
 店内では、 ガラス越しにケーキ作りの様子を見られたり、 喫茶コーナーを設けるなど工夫。 さらに、 リアルタイムに品物を出せるようにしている。
 「鮮度にこだわりたい。 お客さんの欲しい品物をその場で作れるというサービスに心がけている」。 1995年には、 福知山店を開店。 三田の本店と合わせると、 社員はパートを含め53人。 平均年齢は25歳と若い。 将来独立したい人のために、 技術の伝授を積極的に行うなど風通しの良い社風だ。
 昨年70日間かけて、 鹿児島から北海道まで日本列島を縦断した。 「平凡な日常生活から一歩外に出てみたかった。 私がいなかったら、 残った社員で考える機会にもなる」 というのが旅行の動機。旅を終えたあと 「君に逢いに行くョ」 という旅行記を出し、 世話になった人に届けるなど気配りも。 1日500円の貧乏旅行。 野宿や旅の途中に出会った業界の人の家に泊めてもらい、 交流を深めた。
 また、 店を作る時には建築会社に勤める高校の同級生に篠山の大工さんを紹介してもらった。 「さまざまな人との出会いが自分を成長させてくれた」という。 「大学をやめたとき、 親が夜遅くまで田畑の仕事をしていたことを思い出し、 怠けずに働こうと決心しました」 と話し、 両親に感謝している。
(臼井 学)
 
 (つかぐち・はじめ) 1955年 (昭和30年) 氷上町油利生まれ。 篠山鳳鳴高校卒、 追手門大中退。 洋菓子界大手のエーデルワイスを経て独立。

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