大阪大大学院教授(言語文化研究科) 北村卓さん

2010.03.15
たんばのひと

文化の領域を超えて
(きたむら たかし)大阪府豊中市在住

 1954年 (昭和29年) 篠山市生まれ。 大阪大文学部卒。 同大学院博士課程終了。 2001年同大学教授、05年より現職。日本比較文学会関西支部長。

 篠山で生まれたが、 会社員の父の転勤で神戸や岡山などで育ち、 高校は富山。 「でも、 亡き父がいつも篠山の話をしてくれ、 夏休みなどには祖母のいた市内の実家にしょっちゅう行っていたので、 ふる里は丹波と思っています」。 父が定年退職後、 篠山に定住したので、 なお足繁く通った。
 高校時代からサルトルやカミユなどを読み漁り、 大学は迷わず文学部。 「エンジニアの父は 『就職は大丈夫か』 と、 不満だったようですが、 『よくフランス映画を観に連れて行ってくれたじゃないか』 と説得し、 篠山に近い阪大なら、 と許してもらった」。
 無論、 フランス文学を専攻し、 ボードレールに没頭。 「言葉の持つ魅力ですね。 詩集 『悪の華』 にあらゆるものが凝縮され、 色々な読み方ができる。 少々エキセントリック (風変わり) だったかもしれないが、 強い意思を持っていた」。
 それをベースに、 異国あるいは異質な文学同士の表現や精神性などを比較、 分析する 「比較文学」 へ。 「例えば、 谷崎や芥川、 荷風といった日本の文豪は明らかにフランスの影響を受けていますが、 それをどう自分のものにし、 独自の文学にしていったか。 そうした軌跡を追っています」。
 研究はさらに、 「映画 『モスラ』 における福永武彦とボードレール楽園幻想の変容」、 「宝塚歌劇におけるフランスイメージの生成」 など多彩。 「ドストエフスキーやシェークスピアを熟読していた黒澤明の映画も、 すごく興味深い」。
 講座を持つ 「現代超域文化論」 では、 文学を超えてあらゆる文化の領域を渡り歩く。
 一昨秋まで篠山の家で母を看取り、 亡き後も愛猫の世話に行っていた。 「福知山線に乗るとわくわく。 車窓の景色、 町の風情。 可愛がってくれた祖母の顔などが浮かんで来るんです」。   (外野英吉)

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