埼玉県立浦和特別支援学校校長 足立和信さん

2010.07.15
たんばのひと

「自分取り戻す」俳句
(あだち・かずのぶ)東京都在住

 1951年 (昭和26年) 丹波市青垣町生まれ。 柏原高青垣分校、 東洋大経営学部卒。 小中学校の教員をした後、 上越教育大大学院修士課程修了。 障害児教育を専門に。

 発達障害の子供らに対し、 先入観にとらわれず長所を生かせるよう指導する特別支援教育。 中学校の教育現場での体験と、 カナダなどの進んだ指導法に触れたことで、 「この道で行こう」 との思いを強くした。
 大学院で教育学を学び直し、 ひとりひとりのニーズに合った対応を皆で考え、 実践している。 「親や教師が 『相手を受容する』 ということの大切さでは、 障がいのある子もない子も同じなんですよね」。
 忙しい毎日の生活の中で 「自分を取り戻せる」 のは、 俳句を推敲するひととき。 句歴は30年になり、 森澄雄主宰の 「杉」 同人。 このほど初めての句集 『初島』 を発刊し、 NHKテレビの 「俳句王国」 に出演するなど、 俳人としての道も着々と歩んでいる。
 始めたのは兄、 幸信さん (「狩」 同人、 丹波カルチャーセンター講師) の影響を受けてのことだったが、 「新聞や雑誌に発表した2000句の中から句集を編みながら、 牛や田舎の風景をよく詠んでいるなと気付きました。 やはり丹波での子供の頃の体験が色濃く出ています」。
 昔気質の父親とは、 亡くなってから対話が始まった。 外で働いている人を見ると、 山や田んぼで精を出していた父の姿が重なって来るという。 「死に顔も百姓なりし父に冬」
 傾倒する森主宰の 「俳句に対して目が見えないということは、 人生に対しても目が見えない」 という言葉をいつも噛みしめている。 「角川俳句大歳時記」 に、 師の 「不退寺のさればやここに実葛 (さねかずら)」 という 句に、 自句の 「これやこの業平寺の実葛」 が並んで掲載されたのが、 何よりの誇り。
  「日本独特の、 先人の遺した心の豊かさや、 言葉の豊かさ。 そこから広がるイマジネーションを大切にしたいですね」。    (上 高子)

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