今年出版した初の句集 「木造校舎」 が出版社 「北溟社」 (東京都) が主催している石川啄木の妻にちなんだ 「第2回石川節子賞」 に選ばれた。 退職後に始めた俳句だが、 今では四六時中ネタを考える日々。 四季の景色、 何気ない風景、 人の営み―。 目に映る全ての世界を詠み続ける。
「退職後、 知人から 『仕事を辞めたら、 何かしないとぼける』 と言われ、 俳句を始めた。 今ではいつも何かネタはないかと考えていて、 俳句を始める前とは世界が変わった。 この視点を持てることが、 俳句のだいご味なんでしょうね」
「一昨年、 人間ドックで腎臓がんが見つかり、 手術することに。 不安になるかと思ったが、 めったに行くことのない病院の風景がおもしろく、 入院中も句を考えていた。 術後すぐに思い浮かんだ句は 『腎ひとつ 天に還して 雲は秋』。 自分でメモできなかったので息子にしたためてもらいました」
「古希を迎えた区切りにと、 思いきって句集を出版。 節子賞の受賞は、 自分の俳句が評価されたという満足感があります。 まだまだ未熟なので、 これからも精進を続けたい」
「高校卒業後、 地元を離れたが、 今でも年に数回は丹波を訪れています。 久しぶりに懐かしい顔を見ると、 すぐに丹波弁に戻ります」
「句集をまず読んでほしいと思ったのは、 気心も知れ、 同じ土地で育った丹波の旧友たち。 同窓会などで、 またみんなと会えるのがとても楽しみです」
入院さえも俳句のネタにしてしまう藤井さん。 「何を見てもおもしろい」。 この考え方が、 俳人というものなんだろうと、 再認識させられた。 受賞の祝杯は、 もう妻君とあげられただろうか。 「ビアジョッキ 女の白き ちから瘤 (こぶ)」 (句集より)。
丹波市山南町草部出身。 西宮市在住。 2人の子どもは独立し、 妻と2人暮らし。 71歳。 (森田靖久)