山を次の世代につなぐ
昨夏、丹波市を襲った豪雨災害―。被害の大きかった市島町前山地区の山林で、チェーンソーを担いで災害復旧に汗を流している。肩書きは、地場産木材の地域内循環を手掛ける有限会社ウッズ(丹波市氷上町賀茂)の森林管理部所属の社員。自らを「きこり」と呼んでいる。
神戸市北区の出身。兄との遊び場だった近所の山が宅地開発で立ち入り禁止となり、マンションが建った。あの木は、あそこにいた動物たちはどうなったのかと悔しい気持ちになった原体験がある。小学校の卒業文集にも「山の仕事がしたい」と書いていた。
元ダンサー。25歳までに芽が出なければあきらめると決めていた。もう一つの夢だった山に関わる仕事を調べるうちに、現場で作業する人がいなければ何も始まらないと「きこり」の道を選んだ。
林業が盛んな鹿児島県でチェーンソーや刈り払い機、移動式クレーンなど、必要最低限の資格を取得。その後、同県内の森林組合をへて、広島、長野と、活動の場を移しながら林業全般の知識や高度な伐採技術を身に付けていった。その一方で、木を伐り、売るだけの作業に違和感をもち、「山を次の世代につなぐことを、身をもってやりたい」と思うようになったころ、ウッズと出合い、昨年2月、丹波に移り住んだ。
丹波に来て森林所有者と直接向き合う機会が増えた。「少し手を入れるだけで『山に行こうという気になった』と言われると、うれしい」と笑顔。「災害により、山林が無視できない存在になった。地域の人が地域の山をみる仕組みをつくり、全国へと広めていきたい」と力を込めた。34歳。(芦田安生)