菊に毎朝「おはよう」
86歳。10日まで篠山市北新町の大手前展示館前で開かれている「篠山市菊花展」に最年長で菊を出品している。菊づくりを始めて25年ほどたつ。今年は、直径約2のドーム型の千輪作り3鉢、崖から垂れ下がった形に仕立てる「懸崖菊」4鉢、直径約2・5の扇形の菊1鉢、篠山藩主青山家由来のお苗菊12鉢など、たくさんの菊を出品している。
戦時中は陸軍航空隊に入隊。戦後、「自分で形をつくることが大好き」で大工になった。65歳で現役を引退したが、ものづくりへの情熱は忘れず、山口県の錦帯橋の技術にひかれ、架け替え現場に何度も足を運び、約5もある模型(篠山市民センターに設置)を作ったり、高校の講師を務めるなどした。
現役を引退する頃、菊と出会い、「こんなに素晴らしいものはない」と感心。大工仲間からは、「大工が菊づくりを始めた」と驚かれたという。「自分は生まれて一度もほうびをもらったことがない。この菊づくりで行き着くとこまで行こう」と独学で菊づくりを始めた。「軍隊で鍛えた根性。中途半端では終わらせない」と、「昼飯、晩飯も通り過ぎることもある」ほど、菊づくりに没頭する毎日。「菊づくりは子育てと同じ。毎朝、一鉢一鉢に『おはよう』とあいさつする。返事はないが、自分の気持ちが大切。孫に、『おじいちゃんが菊小屋でなにかぶつぶつ言っている』とよく言われる」と笑う。
「菊づくりを始めて10年ほどでようやくほうびがもらえた。みなさんにきれいと言われるのがうれしい。無我夢中になれるのが菊づくりの魅力。軍隊にいた自分がまさかこんな花づくりをするとは思わなかった」。