柏原で新しい世界広がる
柏原町にある神戸地方検察庁柏原支部に今年3月まで単身赴任で勤務。すっかり柏原が気に入った。定年を迎えた今、妻のいる神戸の家と柏原のマンションとの二重生活をしている。神戸で週2日、仕事をし、柏原では地元劇団の「椎の実」に入団。近くに迫った公演で、生まれて初めての舞台に挑む。「縁もゆかりもなかった地で、定年になってから新しい世界が広がりました」とほほえむ。
昨年春、同検察庁柏原支部に赴任。それまで主に神戸の本庁で勤務していた。「1年間、柏原で勤めれば、さっさとサヨナラをして神戸に戻るつもりでいました」。ところが、徐々に心境が変化した。
朝の日課のウオーキングで、毎日のように出会う人とあいさつを交わすうちに世間話をし始め、黒豆をいただくほどの仲になった。「こちらの方は人がいいです」。四季折々の自然美にも魅せられた。田んぼの稲、紅葉、雪景色。「ホタルを見たときは本当に感動しました」。柏原で知り合った人たちと小旅行や飲食を楽しむようになった。
昨年、人に誘われ、椎の実の公演を観劇。興味を持ち、知人に「やってみたら」と後押しをされ、入団した。「柏原に赴任したとき、柏原で演劇をすることになるなんて想像もしていなかった」。職場のOB会で今の生活を話すと、うらやましがられるという。「生き生きしている私の姿に、妻も柏原での生活を歓迎しているよう。椎の実の公演も見に来てくれます」。
ウオーキングに出かける朝、マンションの扉を開け、空気を吸い込む。「山に囲まれた地だけに、本当に空気がおいしい。気持ちがいいですね」。61歳。