葛野産品で6次産業化
琵琶湖産が有名、近年は休耕田でも養殖される白身で上品な味わいの淡水魚、ホンモロコを地域の新たな特産にと研究を続けてきた氷上町葛野報徳自治振興会長。一人の生産者として養殖を始めて4年、ようやく軌道に乗った。年明けから甘露煮への加工を始める。念願の葛野産品の6次産業化までもう一歩だ。
春から秋にかけて自宅裏手に設けた養殖池で飼育。10月に水を落とし、倉庫に移し屋内で冬を越させ、春先に産卵・孵化させる。倉庫には浴槽ぐらいある巨大水槽が7つ。ブーンというモーター音とブクブクという泡の音が響く。水槽をさっと網ですくうと銀色の魚体が、飛び出さんばかりの勢いではねる。
養殖で最も難しい「産卵・孵化」を、水循環システムを導入し克服。安定的に成魚を生産できるようになった。「生き物が相手。ネットや本で見てもやってみないと分からないことがある」としみじみ。
体の厚みが10ミリ以上、9ミリ、8ミリとサイズごとに分けている。出荷時には再度選別機にかけて厳密に大きさをそろえる。「エサの食いの悪い秋からが内臓の苦味が減り、食べやすくなる」と言い、地元の休養施設「やすら樹」に出荷するほか、地域のイベントで自ら天ぷらを揚げ、販売してきた。
当初の目的の6次産業化にようやく差し掛かった。加工は、「かどのの郷」と同一敷地にある特産加工施設「ブランド工房」を利用する女性たちに委ねる。
「6次産業化の動きが、葛野で続くことを願っている。少しずつでもいいから、地域が前に進むよう、一翼を担いたい。一番難しいのが販売。どれだけ売れるか、これからだ」。ニカッと笑った。70歳。