農業に企業的発想を
氷上町の成松商店街の元スーパー店舗を購入し、「キノコの小屋」と名づけてシイタケ栽培を展開しており、4年目。本業は前田建設の社長。「このままでは、廃墟になる」と10年前に空き店舗を購入。「建物は壊してしまえば終わり。再利用をする道はないか」と考えた末、シイタケの栽培にたどりついた。
「明石でビルを建てた時に施主から聞いたのが、シイタケの菌床栽培。4階全部でシイタケを栽培していた。工場での野菜生産に興味を持っていたこともあり、やりたいと思った」のがきっかけ。農産品生産にかかわって感じたのは、販売価格の低さ。それにも増して生産コストが高くつく。「企業的な発想で改善できないか」と知恵を絞る。商店街の軽トラ市にも商品を出す。「商店街の活性化にも役立ちたい」と力を込めた。
生産量は日産約70から100で、年間約30。JAや道の駅、スーパーなどに出荷している。年間を通じ、一定量を確保できる温度管理や販路拡大が課題。「売り込む余地はまだまだあると思うが、遠方だと輸送コストがかさむ」と悩むが、生来のネアカな性格で、前を向き、秘策を練る。
「農業に活力を注入するため、将来的には、農産物の販売などにも取り組みたい」と意欲。異業種に参入して視野や付き合いが広がった。「本業と副業という考え方でなく、互いに相乗効果を出せれば。本業は大事だが、新しいことにも挑戦しなければ企業は衰退する。若い経営者と話す時、シイタケ栽培に興味を示してくれることもある。もう少し踏ん張って、次世代に引き継ぎたい。長年、お世話になった地域に恩返ししたい」という。62歳。