「貧しさもつらくない 四畳半にも夢がある~」で始まる「昭和最後の秋のこと」は阿久悠が1999年(平成11年)に作り、森進一や桂銀淑が歌う。良い曲だが、カラオケで歌いながら「昭和最後の頃はバブルの絶頂期で、貧しさとは無縁だったはずだが」と、最初は違和感があった。
しかし戦後間もなく、30年代頃のことを昭和の最後の方で懐かしんでいるのかと考えると、納得出来る。そして最終節の「山の紅葉に照り映えて 色づく夢がまだあった」の部分で、平成が10年経ってからバブル崩壊直前の〝昭和最後の秋〟を振り返ったのかもしれない。
「平成最後の秋」がゆく。新しい年号の10年頃にはどんな曲が出来ていようか。この30年を振り返れば、〝失われた〟10年だか20年を経て、数字の上だけの景気回復。充足感を持つ人はさほど多くはない。スマホやAIの普及で、いつもせかせかと追い回されている感じ。
大地震などの災害に幾度も見舞われ、これからもなお確実にやって来るとの予報におびえている。オリンピックだ、万博だと浮かれている場合なのか。
「貧しさが身に沁みる 十畳あっても隙間風~」「五輪、万博は照り映えていたけれど…」―阿久悠氏ほどの詩才がないのが残念。ともかくこんなことにならぬよう、来年も精進するか。(E)