卒業シーズンの先陣を切って丹波OB大学で修了式が行われ、平均年齢約70歳の4年生たちが学び舎を後にした。

2006.12.27
丹波春秋

卒業シーズンの先陣を切って丹波OB大学で修了式が行われ、平均年齢約70歳の4年生たちが学び舎を後にした。老いてからの旅立ちを歓迎したい。▼老いるとは、肉体の健康が衰えることだ。これは、いかんともしがたいのだが、健康づくりがブームになるなど、健康に過敏になっている反動として、若さに価値が置かれ、老いることが拒絶されているような気がする。しかし、老いとともに肉体は下降線をたどっても、技と知恵は円熟していくのが本来ではないか。▼75歳で「富嶽百景」を出した葛飾北斎は、その序文に「70歳までの作品にいいものはない。ようやく73歳で悟りを得た。100歳になれば神技の域に入ろう」と書いた。これまでの作品を否定し、時とともに技が熟していくと予見した。北斎にとって、老いることは技の完成に近づくことだった。▼知恵も同様だ。ソクラテスは哲学を始める年齢を50歳と決めていたという。手元の辞典には、哲学とは「人生の根本的な原理を探究する学問」とある。人生を探求するには、それ相応の人生体験が必要で、50歳までの道のりはそのための準備なのだ。人生の思索は、後半生になってこそ熟する。▼少子高齢化の進む地域社会において今後、高齢者の力がますます求められる。円熟した技と知恵を発揮してもらいたい。(Y)

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