著名な歴史学者ジャレド・ダイアモンドの近著「文明崩壊」(草思社)を正月に読んだ。彼によると、今や草木一本ない南太平洋の孤島、イースター島に残る巨石像群は、島の首長たちが宗教的なシンボルとして競い合って建てたものという。▼しかし、最盛期1万5千人が住んでいたらしい同島も、より多くの労働力を養うための食料や木材の供給が追いつかなくなり、森林破壊が進んで食料が枯渇し、首長の権威が失墜。巨石像は逆に恨みを買って倒されていった。「社会は人口、環境への侵害が最盛期に達した直後に崩壊する」。▼考察は、同様にかつて繁栄した中米のマヤやノルウェー領グリーンランド、時代を下って近世の日本、現代の中国、豪州、そして米国の田舎、モンタナ州にまで及ぶが、森林の管理に成功した徳川期の日本に例を見るように、「問題を解決して崩壊を防げるかどうかは、その社会の制度や価値観次第」と説く。▼翻って、現代日本が初めて迎えた「人口減少」という現象を見るに、春秋子には、人々が賢明にも文明崩壊のメカニズムを察知したためかと考えられないでもないが、日本にもよく通じているダイアモンド博士に聞いて見たいところだ。▼無論、少子化への手立ては必須だが、猪口担当大臣が唱える「出産費用の無料化」などという方法では解決は到底すまい。(E)