政治家にはさまざまな資質が必要だが、何と言っても体力が肝要なようだ。屋外に出ると、じっとしているだけでもぐったりするこの時期に、肉体的にハードな選挙をしようというのだから。政界も気候も暑い毎日だが、暦の上では立秋を過ぎた。▼ちょうど今ごろの暑い日、ある風流人の家に来客があった。茶室に通された客人は、汗をぬぐいながら床の間の掛け字に目をやった。「夕有風立秋」とある。客人はこれを「夕方ごろ吹く風に秋の気配を感じる」と解釈した。▼「このごろにぴったり。良い句ですな」とお世辞半分にほめる客人に、主人はにこりとした。「いやあ、これはユーアルフーリッシュと読んで、おバカさんね、ということなんです」と答えた。▼バカと政治家の2つの言葉で真っ先に連想するのは、「バカヤロー解散」だ。1953年、ときの首相、吉田茂が議員の質問に対して興奮のあまり「バカヤロー」と発言したことがもとで、衆議院が解散した。▼バカという言葉は、もともとは僧侶の隠語。隠語というのは、特定の社会や仲間だけに通用する特殊な言葉だが、吉田首相のおかげで、そんな隠語も国の政界という大きな舞台にのしあがった。さて、先の「夕有風立秋」。今回の解散による総選挙で、政界のだれが「おバカさんね」と言われる結果になるのだろうか。(Y)