ワンゲル伝統の「夜間歩行」 夜通し歩いて70キロ、制限時間は12時間 充実感に涙も

2019.09.03
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柏原高校から約70キロ歩き、由良海岸でゴールを喜ぶ部員たち=京都府宮津市で

兵庫県丹波市の柏原高校ワンダーフォーゲル部がこのほど、同校から由良海岸(京都府宮津市)までの約70キロを夜通し歩いたり、走ったりする「夜間歩行」を行った。1969年からほぼ毎年行われてきた伝統行事だが、96年から行われなくなった。部員の声を受け、2015年に20年ぶりに復活した。今年は1、2年生の部員26人中、男子3人、女子5人が参加。へとへとになりながらも、「夏の良い思い出になった」と充実感を味わっていた。

午後7時に同校を出発。本州で最も標高が低い分水界「水分れ」(同市氷上町石生)、由良川沿いを通り、由良海岸まで行く行程で、12時間という制限時間を設けた。辻野彰一顧問によると、全行程を徒歩で行くと制限時間に間に合わない「絶妙な設定」だという。

顧問2人が車2台でサポート。部員たちは会話を交わしながら楽しく出発したが、途中、全員が足が痛くなり、互いに励まし合って進んだ。制限時間に1時間届かなかったが、完歩の合図となる由良海岸の海水に手を付け、皆で喜び合った。全身に痛みを覚える部員や、充実感から涙する部員もいた。

同校ワンダーフォーゲル部は、かつて丹波篠山市にあった兵庫農科大学(現・神戸大)のワンダーフォーゲル部に所属していた樋口清一さん(82)=現・篠山自然の会代表=が同校に赴任した2年後の66年に生徒の要望で発足。その3年後に「歩く限界を知ろう」と夜間歩行を始めた。初回は有志の部員15人と共に樋口さんも参加。樋口さんは「普段しょっちゅう歩いていたが、足の裏、太もも、膝などあちこちに痛みが出て、大江町辺りでリタイヤした」と振り返る。

柏原高校ワンダーフォーゲル部出身の辻野顧問が夜間歩行の思い出を部員に話したところ、「復活してほしい」との声が上がり、再開した。

参加した男性部員(2年)は「みんなと話しながら歩き楽しかったが、足がボロボロだった」と話していた。辻野顧問は「歩く前はこんなにつらい行事と思わなかった部員が多かった。『夜間歩行に比べたらつらいものはない』というOBもいる。希望者がいればこれからも継続したい」と話している。

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