10年前の消毒液使える? メーカー「基本は3年」「自己責任で」 容器溶け出している可能性も

2020.05.17
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倉庫で見つかった10年以上前のものとみられるアルコール消毒液(画像の一部を加工しています)=2020年5月13日午後2時23分、兵庫県丹波篠山市大沢で

兵庫県丹波篠山市にある弊社の支局で仕事をしている合間、手を洗おうとしてテナント共用の洗面台に見慣れぬボトルを見つけた。よく見ると「アルコールジェル」の文字。入居するテナントの大家さんが、新型コロナウイルスの感染防止にと置いてくれたものだった。感謝しつつ、ふと年代を感じさせるイラストや一部変色しているラベルが気になった。「いつのものですか?」と問いかけると、「さぁ、10年以上はたっとるやろ。倉庫に眠ってたから」と大家さん。今も品薄が続く消毒液だが、古いものは使っても大丈夫なのか。調べてみた。

 大家さんによると、「たぶん10年以上前。20年はたっていないはず」と言い、法事のお返しか金融機関などで記念品としてもらったものだそう。10年前と言えば、新型インフルエンザが流行した時期。当時も消毒液が重宝された。
 結局、使うことがなかったため、未開封のまま倉庫に置いており、ほかにも何本かあるという。「新型インフル以降、めったに使うものやなかったけれど、コロナ禍の今となっては宝の山やね」と胸を張る。
 確かにいまだ品薄のアルコール消毒液。貴重な品だ。問題は10年以上前の製品が“現役”かどうか―。
 製品の成分はエタノール(エチルアルコール)。プッシュしてジェルを出してみたが、アルコールのにおいはするし、色も透明。香りと見た目では問題ないように感じる。
 ラベルに使用期限は書かれていなかった。使用方法のほかは、使用上の注意として、「幼児の手の届かないところに保管する」「火気の付近で使わない」「かぶれ、かゆみなどが出たら医師に相談を」など、おなじみの言葉が並ぶ。
 唯一、赤字で書かれているのも「火気厳禁」で、「50度以上の温度になる場所には保管しないでください」とある。
 製品からこれ以上の情報は得られないため、製造元に連絡した。
 現在は取り扱っていない製品とのことで、ラベルのデザインなどを伝えると、やはり、「10年以上前の製品ですね」とのこと。使用について尋ねると、▽未開封▽冷暗所で保管している―ことを前提に、「保湿成分などが変色している可能性もあるが、アルコール自体は劣化しにくいため、品質は保たれているかもしれない。とはいえ少しずつアルコールが揮発している可能性もあるので、一度出してみて、ちゃんとアルコールのにおいがするか、肌に付けても荒れないか、などを確認してもらい、大丈夫ならば使用することはできるかもしれません」と回答があった。
 ただ、「多くの消毒液は基本的に品質が保持できるのは『3年』とうたっている」と言い、今回の消毒液の使用が「問題ない」とまでの言葉はなかった。
 念のため、もう1社、別のメーカーにも意見を聞いた。
 担当者は、「さすがに10年と言われると、使えるかどうかは何とも言えませんねぇ」と第一声。「弊社の製品でも消費期限を書いているものもあれば、書いていないものもある。一般的には1年くらいで使い切ってほしいが、社内での基準は3年にしている。結構あいまいなものです」とした。
 10年以上たっている製品については、「使用に問題はないかもしれないが、細かいことを言うと、アルコール自体は大丈夫でも、容器の成分が経年変化で溶け出している可能性もある。それが原因で肌にトラブルが起きることもあるかもしれない」と指摘。「メーカーとしてはおすすめできません」としたうえで、「使うならば、あくまで自己責任で使ってください」と念を押した。
 取材した内容を大家さんに伝えると、「大丈夫かもしれんけど、何かあったら困る。使わないほうがええかもしれんなぁ」と、少し落胆した様子だった。
 みなさまも、もし家で古いアルコール消毒液を見つけたら、十分気を付けてお使いください。

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