公開中のアニメ映画「天気の子」は主人公の少年の、傍目からは狂気の沙汰と思われるほどの純愛を描いているが、題名の示す通り、気候変動をテーマにしたSF。
2021年の東京は3カ月以上雨が続き、夏なのに雪が降って大変な状況になる。警告して予定調和的に終わらせる設定とは異なり、ホラー的な不快さは何ら感じさせないものの、恐ろしい物語ではある。
新海誠監督は「オリンピックの向こう側を描きたかった」と述べている。マスコミは五輪、五輪の報道であふれているが、「浮かれていていいの」と言っているようにも思える。
不思議だったのは、これだけひどい気象が続いても、テレビのアナウンサーはどの局面でも「かつてない記録的な降水量です」などと、淡々と話すだけで、驚愕している風にも、危機感を募らせているようにも見えない点。「何とかしろ」と街頭で騒ぎが起きるわけでもない。無論、騒いで解決する問題でもなく、電車の代わりに水上艇まで出て、市民は黙々と通勤している。
一夏中30度を超すような猛暑に襲われ、「何10年に1度の…」が全く珍しくなくなっている現実の世が、このSFと重なり合っても見える。「調和が戻らない世界で、若者達が何を生み出すのか」という作者の想いに、まだ希望を見出したい。(E)