統一地方選挙後半戦(市町村長・議員選)は、当該自治体の住民以外には関心が低くなりがちだが、今回は他所からも注目をひく選挙が少なくなかった。▼放射性廃棄物最終処分場の立地調査受け入れ問題で揺れた高知県東洋町では、安全への不安に加え、独断で進めようとした前町長への反発などから、反対派の候補が圧勝。財政破たんした夕張市では、全国から立った7人の候補者の中で地元出身の会社社長が、温泉施設などへのテコ入れを約す青森のホテル経営者らを破った。▼いずれも堅実な選択だったと思えるが、前途が厳しいことに変わりはない。過疎化、交付金の激減に苦しむ東洋町は禁断の実を捨てたからには、それに替わる自立の策を素手で講じていかなければならない。▼そして、最有力候補が凶弾に倒れ、急きょ補充候補者が2人立った長崎市。同情票を一手に集めるかに見えた娘婿候補が、「長崎もんの手で」という元市課長に僅差で敗れた。弔い合戦の娘婿も果敢だったが、すぐ疑問を感じ立ち上がる職員がいたのは、この市の底力を感じさせた。大勢いる元上司をうまく率いることができれば、災いを福に転じられるだろう。▼いずれの選挙も決してよそ事ではなく、全国どこの自治体にも共通するものを示唆してくれた。そして主役はあくまで住民である。(E)