「蛙(かえる)の宮さん」の名で親しまれる兵庫県丹波篠山市今田町上小野原の小野原住吉神社で5日夜、伝統の神舞い「蛙踊り」が奉納された。収穫の喜びと感謝を神に表す県指定の無形民俗文化財で、同市三大奇祭の一つ。「ヘーツ、ヘーツ」などの独特の掛け声や太鼓の音が鎮守の森に響き渡り、神秘的な空間を演出していた。
鶴と亀を染め抜いた紺色の着物をまとった神舞保存会の会員らが、約1時間にわたって「惣田楽」と「いず舞」の2つの踊りを奉納した。
惣田楽は稲の収穫風景を表現するもの。竹の短冊を88枚つなげた楽器「ビンザサラ」を手にした踊り手が、太鼓の音に合わせて、「ヘーツ、ヘーツ」とまるでカエルのような声を上げ、太鼓と踊り手が場所を変わる際には「カエロ、カエロ」と言いながら、刈り取った稲を稲木にかけ、脱穀するまでの作業を表現した。
いず舞は、田に舞い降りた鶴が豊作に感謝し、舞を披露するという内容で、両手を広げて羽ばたきのしぐさを見せた後、勢いよくジャンプした。
跳ぶまでの時間は焦らすような素振りにも見え、「今か今か」と待ち受けた末のダイナミックな跳躍が飛び出すと、見物客らは競うようにシャッターを切っていた。