地に落ちた「商道徳」

2007.06.28
丹波春秋

 禁酒令が敷かれた城下の酒好きの侍宅から、こっそり一升瓶を持って来るように頼まれた酒屋。検問所を「水カステラ」と偽って通ろうとしたが、これまた酒好きの検(あらた)め役に見破られ、飲み干されてしまう。▼再び「油」と称して出かけたがまた失敗。ほうほうのていで逃げ帰ったものの、2升無駄にしてしまったのがおさまらず、今度は本物の小便を瓶に詰める。べろべろになって、「小便ではないであろう。新種の酒らしいな」と口にしかけた検め役、ぷはーっと吐き出し、「おのれ、今度は正直に申告しやがって」。▼先日の大阪丹波友の会で丹波出身、笑福亭由瓶さんの話に皆、腹を抱えた。落語の世界ならそれでいいが、現実世界の「偽装牛ミンチ」は笑えない。社長が「自分は知らなかった」、「豚肉と同じ機械を使っていて混ざったのでは」と、塗り重ねていた嘘が、だんだん隠しきれなくなり、記者会見の席で息子の取締役にたしなめられて、やっと白状というていたらく。▼結構人気の品で、全国の生協やスーパーに納められていたという。それなら初めから正直に「豚肉ミックスでより美味しく」とうたっておればよかったのに、消費者の牛肉神話が許さなかったのか。▼「商道徳も地に落ちた」感の事犯が続出。伸びている事業家こそ、自戒してほしい。(E)

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