仏壇のある家は2軒のうちの1軒という全国調査の結果を第一生命経済研究所がまとめていた。調査の対象になったのは40歳から74歳の男女。子どものころには仏壇があったという人は7割ほどだったから、核家族化などで仏壇のない家が増えてきたということだろう。▼「家族の絆を強くするのに、仏壇はすばらしい効果をもたらす」と言うのは、大阪大学名誉教授の加地伸行氏だ。正月、盆、彼岸などに家族が仏壇の前に集まる。仏壇に向かって子どもの受験の成功を祈り、嫁入りする娘との別れも仏壇の前でする。家族の通過儀礼には必ず仏壇があることで、家族が一つにまとまるという。▼加地氏が、そうした仏壇のすばらしさを欧米人の前で話したとき、通訳が「仏壇」を「ホームチャーチ」と訳したそうだ。聴衆はどよめき、加地氏もその名訳に気を良くして「どうだ」とばかりに胸を張ったという。▼ホームチャーチは、聖なる空間が家庭という身近な場にあり、家族の心の拠り所になりえること、さらには家族の暮らしの中に宗教が溶け込んでいることを示している。仏壇は、暮らしと宗教が渾然一体化しているシンボルと言える。▼先の調査は都市部を含んでおり、丹波のような地方になると、仏壇の保有率はもっと高いだろう。仏壇のある暮らしを見直したい。(Y)