河合隼雄氏の死を悼む

2007.07.30
丹波春秋

 「子どもの心の教育に、墓参りは大切です」。こう提言されたのは、河合隼雄氏だ。河合氏によると、墓参りによって、人は死ぬことを学ぶ。さらに、死んだ人と生きている人の間にはつながりがあり、命の長い連鎖の上に自分が存在することを学ぶという。▼注意点がある。お墓に参って、「これはおじいちゃんの墓。お父さんが小さいときは怖かった」などとお話をするのはいいが、「人は死ぬんだから命を大切にしろ」と、上からものを教えるような態度はとらないこと。ふたつ目は、親もちゃんとお参りをすることだ。▼河合氏は、子どもは思いのほか死について考えているという。しかし、死について大人に語ることは少ない。言ってみても、不愉快な顔をされたり、満足のいく回答を得られないことを知っているからだ。▼それは、墓参りでの注意点にみられるように、大人は命についての教え方が教条的で高圧的であり、死者に対する弔いが形骸化していることを見抜いているからではないか。▼河合氏は「死は実に多くの疑問を人間に投げかけ、人間が生きることの意味の深化を求めてやまない」という。図らずも河合氏は、自らの死をもって私たちに問いかけを残された。その問いかけには、死と生の意味のほかに、子どもの心の教育をどう深めていくかも含まれている。(Y)

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