特別天然記念物のコウノトリを兵庫県丹波市で繁殖、定着させようと、2017年から4年連続でコウノトリが飛来した同市市島地域の有志が、繁殖用人工巣塔の設置を市に働きかけている。市はこのほど同地域の自治振興会長に、冬場の餌場確保のための冬季湛水が可能かなど、地元の協力体制がとれるかを投げかけた。巣塔を設置しても、年間を通じた餌場が確保できないと繁殖につながらないとして、市は地元の機運醸成や合意形成が進むのを見届けた後、設置可否を判断する考え。
4年連続で同市を訪れているメスの「JO131」が、今夏初めてオスを伴って飛来。繁殖の期待が高まった。ひと月ほど同地域で滞在し、餌をついばんだ。2017年秋にも「JO131」が1カ月半、滞在。野菜の有機栽培に力を入れ、「有機の里」をうたう同地域にぴったりと、有志がコウノトリを定着・繁殖させる運動に取り組んでいる。
12月の市議会定例会の一般質問でこの問題を取り上げた議員の質問に、市は、一時的な滞在で、長期滞在に至っていないことや、1年を通した餌場が確保できていないこと、餌場の確保には、冬季湛水や、河川の水位を下げるなど地域の協力が必要なことなどを挙げ、巣塔整備に慎重な姿勢を示した。谷口進一市長は「実現させたい」とも答弁しており、前向きに検討している。
実現に向けた市の取り組みの一つとして、このほど市の農林担当部長が自治振興会長に地元協力の可否を打診。今後、自治会長を通じ各自治会に伝えてもらい、実現の可能性を探る。
同部長は、「市島には年間を通じて農業を学ぶ市立『農の学校』もある。有機農業のシンボルになり、環境学習や地域づくり事業ともリンクさせていける利点がある。一方、市は有機農業を進めており、有機農業は畑作が多い。畑に冬場に水をためる協力が得られるのか課題がある。地元の協力が得られるかをまず聞いた上で実現性を探りたい」と話している。