村人の矜持

2007.10.04
丹波春秋

 丹波市春日町中山の農家の人たちが4年前から続けている「里山ウオークデイ」に参加した。▼拠点の小橋さんの家で農作業体験や餅つきをしたり、大納言おはぎや豚汁を楽しむほか、あとは地図を片手に集落内を自由に散策する。ふだん、米や野菜を送っている都会の人たちに、生産者とじかに顔を合わせると共に、年に一度、「里帰り気分」を味わってもらおうという趣旨だ。▼地図の「名所」はざっと50カ所。寺社や古墳、名木は勿論、灰小屋、牧場跡、「昭和の駄菓子屋」、はては「見上げの竹薮」、「ツバメの嫁入り門」などいわくあり気なものまで。ザリガニの池、タニシの溝っこ、笹舟流しの小川など、よくこれだけ集めたものだ。三尾山の麓の集落は、適度に狭い道が伸び、適度な勾配の坂があって、小雨上がりの緑が瑞々しい。▼両手にずっしり重いトウガンの畑を見学し、珍しい白ナスをわけて頂き、「県内唯一の養蚕農家」では桑の実のジャムをご馳走に。網を手にすれ違った小学生の水槽をのぞくと、「これがクロゲンゴロウ、こちらはコオイムシ」と、博士のようにくわしい。西宮から来たという。▼身近にありすぎて見過ごしている資源が、こんなに多くの人たちに価値を認めてもらえるとは。久々にのんびりした休日を過ごし、村人たちの矜持(きょうじ)を感じた。(E)

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