ライト兄弟が初めて試験飛行に成功したとき、祝賀会でスピーチを求められた。兄のウイルバーが静かに立ち上がり、こうスピーチした。「鳥の中で一番おしゃべりのオウムは、飛ぶことが下手です。よく飛ぶ鳥はおしゃべりをしません。私のスピーチもこれで終わります」。▼おしゃれで、いき。短くて、聞く者の心をとらえる。ライト兄弟の話をじっくりと聞きたいと思っていた祝賀会の参加者はやや不満だったかもしれないが、思わず吹き出したに違いない。参加者の記憶の底に残る名スピーチだ。▼残念ながら、こうしたスピーチに巡り合うことは珍しい。とりわけ大会や式典での、主催者や来賓のあいさつには閉口することが多い。とりとめのない内容を、さんざん時間をかけて話されると、腹立たしくなる。一等すぐれているスピーチは、短くて、内容や話し方に感嘆するもの。話し手の人間性や能力もうかがい知れ、好感が持てる。▼本紙5面の「自由の声」によると、丹波市の障害者のイベントで来賓たちが延べ30分にわたってあいさつしたらしい。しかも、来賓は座って、参加している障害者は起立したまま。▼投稿者が書いているように、あいさつの前に「どうぞ座ってください」と声をかける来賓がいてほしかった。この一言だけで見事なスピーチになったろうに。(Y)