ツァラトゥストラ

2008.01.12
丹波春秋

 高校を卒業するとき、担任の先生から1冊の本をいただいた。ニーチェが書いた「ツァラトゥストラ」という哲学書だ。不肖の教え子だったので、この難解な本を読みこなすことはできなかったが、「ラクダから獅子へ。獅子から小児へ」という3段階の変化は印象に残った。▼この3段階を経て、人は成長しなければならないと説いたものだ。最初のラクダは、重荷を担う段階であり、「人はかくあらねばならない」という価値観を植え付けられるときだ。しつけがほどこされる幼少期や少年期がこの段階にあたる。▼次の獅子は、批判の段階だ。世の中の価値観をおかしいと思ったり、自由を求めて束縛から逃れようとする。おおよそ思春期からこの段階へ移り始める。かつて大学で学園闘争の嵐が吹き荒れたが、あれはまさに獅子の行動であったろう。▼最後の小児は、創造の段階だ。懐疑や批判の精神に富んだ獅子から、自ら新しいものを創造する小児へとランクアップしなければいけない。純真無垢である小児は、新しい出発の象徴である。▼高校卒業の旅立ちに際して、この本をくださった恩師は「雄々しき獅子となり、自分の足で立ち、自ら創造する人になってほしい」と願われていたのだろう。ありがたく思うと同時に、このメッセージを、成人式を迎える20歳の若者達におくりたい。 (Y)

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