川端謹次 没後10年展

2008.04.10
丹波春秋

 柏原出身の画家、川端謹次の没後10年を記念した展覧会が丹波市立美術館(13日まで)と「神戸ゆかりの美術館」(神戸市、7月27日まで)で開かれている。川端の絵は、水と木々の緑を基調にした多彩な自然や街角の風景が大半だが、筆者には、時折アクセントとして添えられる人物の点景が興味深い。▼例えば昭和初期の柏原・木の根橋界わいを描いた「霧立つ丹波路」(今回は神戸で展示)。近景から遠景への通りを往来する人々はいずれも後ろ姿か横向きで、顔はわからないのに、皆活き活きしている。▼手前の買い物籠を抱えたエプロンがけの母親、後ろから遅れまいとついていく幼女。欅が葉を落とした初冬、娘さんは和服のコートにしっかり身を包み、中年紳士はマントを風にひるがえらせている。軽く筆をたたいただけのようなのに、年恰好から表情まで十分想像でき、まるでこの町に入り込んで行くような感じになる。▼丹波の会場にあった「街路樹(バルセロナ)」や、「黄昏時」も40―50年後の全く違う場所なのに、同じ作りだった。▼神戸の会場で、83歳の川端が奥須磨公園の池を油絵具でスケッチする映像が公開されていた。20分ほどの間、全く手を休めることなく色を塗り重ね、最後に釣り人らを鉛筆と絵筆ですばやく追加して完成。魔術を見るようだった。(E)

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