腹ペコ?人かむ川魚 渇水で餌不足原因か 源流の魚にも厳しい夏

2020.09.03
ニュース丹波市地域地域

食べられる物は何でも食べようと、足を小突くタカハヤ=2020年8月31日午後2時32分、兵庫県丹波市青垣町内で

記録的な高温少雨に見舞われた8月。火照った体を冷やそうと、兵庫県丹波市青垣町内の加古川源流に通うたびに魚に体を小突かれる、これまでにない経験をした。専門家の見立ては「食べ物と思って食いついた」。昔から源流に生息している魚がこの夏、ドクターフィッシュと化したのには、酷暑が影響しているようなのだ。

例年より水量が少なく、水温も高い渓流に足を浸していると、虫に刺されたようなチクッとした痛みが走った。見ると、黒っぽい小魚。体長3―10センチほどのタカハヤが、足を小突いていた。「まさか」と思い、別の場所で今度は浮き輪を浮かべて寝転んでいると、背中に同じ感覚が。水中で立っていると、魚が集まってきて足を小突き始めた。小さい個体に噛まれるとこそばゆく、大きい個体に噛まれると少し痛い。それにしても、人間が怖くないのか。

手を水に浸すと、手にもたかってくる

淡水魚に詳しい、須磨水族園(同県神戸市)の馬場宏治学芸員は、「断言はできないが」と前置きした上で、「雨不足で、餌不足になっているのが原因だろう」と言う。丹波市の8月の雨量は10・5ミリと、平年値の7%にとどまる記録的な少雨。

そこに来ての高温。馬場さんは、「川の水量が減り、水が流れる面積が減り、タカハヤの好物の水生昆虫が減った。いわば、彼らは腹ペコ。そこに目新しい物が来たので、食べられると思ったんじゃないか」と見る。渇水になると、魚の生息密度が高まり、乏しい餌の奪い合いになるという。

馬場さんによると、タカハヤなど河川源流部にすむ魚は、イワナがヘビを食べるように餌が乏しい環境で生きるが故に貪欲。タカハヤは雑食で、食べる物がなくなれば藻でも何でも食べる。人間を小突くことはたまにあるという。「普通に食べ物があれば、好んで目新しい物に手を出さない。食料がなくなると、上位の捕食者が影響を受けるのが食物連鎖。支流の水が集まる下流部と違って、源流部の彼らにとって、今年の夏は、とてもしんどいということなんだろう」とおもんぱかった。

同市の青垣いきものふれあいの里の蘆田昭二さんによると、以前、川で死んでいた鹿をタカハヤの群れが食べているのを見たことがあるという。

関連記事