新幹線での出会い

2008.05.15
丹波春秋

 先日、東京に向かう新幹線車中でサンドイッチとコーヒーを買い、サンドイッチの袋を開けようとしたとたん、はずみでテーブルに置いたコーヒーをひっくり返してしまった。3列の通路側で、真ん中は空席だったが、窓側に女子大学生。▼「すみません、かからなかったですか」と詫びながら、床に流れるコーヒーを拭きにかかる。すると彼女は「いいえ、大丈夫です」と、ティッシュをいっぱい取り出し、一緒に座席の下にかがみ込んで、自分のハンカチまで潰して手伝ってくれた。販売員の女性も駆けつけ、ようやく終了。カップの蓋のお陰で、大事にはならなかったようだ。▼それにしても、「近頃の若者は」と言われる中で、見上げた親切心。持ち合わせの小さな菓子折を、遠慮するのを無理に受け取ってもらう。リクルート・スーツに気付いて「求職活動中ですか」と聞くと、「ええ、会社説明会に行くところです」。▼島根出身の岡山大の学生で、旅行業界志望だが、全国の色々な所で仕事をしたいので、地元より東京の会社がいい。でも周りには、もう決まった友達もいて、少々焦りを感じ始めたとか。▼「私も随分、採用の面接をしてきましたが、決め手は目の色の耀き。相手の目を真っ直ぐに見て話すことです」と余計な説教をし、「あなたならきっと大丈夫」と励まして別れた。(E)

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