タバコと「健康病」

2008.08.11
丹波春秋

 専用のカードを持たなければ、自動販売機でタバコを買えなくなって以来、「タバコの売り上げが落ちた」と、知り合いの小売店店主がこぼしていた。カードの普及が伸びないのが大きな理由だが、カードの導入をきっかけにタバコをやめた人がいるのも影響しているらしい。▼喫煙の環境は大きく変わった。昔は、事務所内でもタバコが吸え、自分の机に個人用の灰皿を置いていた。今は、分煙が当たり前。さらには敷地内禁煙も進み、愛煙者に対する締め出しは強まる一方だ。▼健康に与えるタバコの害がつまびらかになるにつれ、禁煙や嫌煙の動きが強まり、タバコをやめる人が増えてきたようだ。タバコに対する社会の価値観が変わった背景には、健康への関心の高まりがある。▼ただ、健康への関心には落とし穴が潜んでいる。健康や病気に関する情報を得れば得るほど、自分の健康に不安が増してくるという逆説の現象だ。テレビでこの食品が体にいいと紹介されたとたん、その食品を買い求める客がスーパーなどに殺到するのは、こうした不安症状の現れだろう。▼タバコが体に悪いのは言うまでもない。しかし、ひたすら健康にかかずらうことを「健康病」と言うとおり、健康に対する過度の不安症状も決して心身にいいものではない。何事も節度が第一。 (Y)

関連記事