中国と五輪

2008.08.28
丹波春秋

 オリンピックが終わり、「一大イベント」をなしとげた中国政府は、どっと疲れを感じているのでは。「中国がこれからの主役」ということを、世界に示した大会には違いなかった。▼さて、野口の走らない女子マラソンで、レースの興味がわかないままテレビ画面を眺めていて、気付いた。沿道の観衆が、随分遠い所にいるのだ。何車線もある広い通りばかりだったせいもあるが、ほとんどの所に柵が張られ、いつもは太極拳の人たちでにぎわう天壇公園にも、一般の人影は皆無。観衆は隔離されていた。▼また「飛人」の異名を持つ中国の英雄、ハードルの劉翔が、スタート台に立ちながら怪我の痛みに耐えられず棄権したことについて、ネットなどで「敵前逃亡では」という批判が寄せられたという新聞記事にぞっとした。▼かつて共産圏の国々がアメリカとメダルを張り合った時期、東独には監視カメラの付いた強化合宿所があったことを、マラソン2連覇のチェルピンスキーが後に現場で証言するテレビ特集を観たことがある。▼中国がそれを真似ているとは思わないが、色々な意味で、日本などとは比較にならない高度なシステムが出来ていることは想像できる。それがゆきすぎた愛国主義と結びつくと、どうなるか。「これからの主役」にとって等閑視できぬ課題だろう。 (E)

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