たんば田園公響ホール20周年記念の東京混声合唱団の演奏は、「日本唯一のプロ合唱団」の触れ込み通りに充実し、感動した。▼何よりも、アカペラ(無伴奏)曲の正確さ。アマチュアはピアノや調子笛で「ドミソ」など基準音を聴いて、歌い出しの音を調整するが、彼らは基準音を聴かなくても「絶対音」が身についているのだろう。いきなり楽譜通りの音を出す。▼次に、尺八と共演した「追分節考」の新鮮さ。信越地方の峠を往来した馬子、雲助、瞽女(ごぜ)たちの醸す雑多な音を表現した曲で、団員が客席全体に散って立体的に歌い、尺八も実に柔らかな音。ホールの音響効果が最大限活かされていた。▼また、指揮者の高谷光信さん。30歳そこそこで、高レベルのウクライナの交響楽団で指揮者を務める。アドリブのせりふをまじえ、後姿を意識した格好良さが印象的。そして白眉は、アンコールの「デカンショ節」。この歌の合唱曲は地元のコンサートでも聴いたことがなく、編曲があるとは知らなかった。「まさかそこまでのサービスはないだろう」と思っていたら、ズバリ登場し、「ヨーイヨーイ」の音頭の旋律もぴたり正確。▼第1部の地元合唱団との共演も良く、かつて同ホールの聴衆がこれほど熱狂したことはなかったのでは。記念の会にふさわしい盛り上がりだった。(E)