地域における徳目

2008.09.29
丹波春秋

 「家庭における最大の徳目は愛である」と、哲学者の梅原猛氏は言う。家庭はそもそも男女の愛の結びつきから始まることを思うと、まさにその通りだ。夫婦間の愛情、子どもへの愛情。家庭にとって愛は、家族をつなぐ求心力に他ならない。▼梅原氏は、「職場における最大の徳目は信である」とも言う。与えられた仕事をきっちりとこなす。責務にこたえられる信頼感。誠実で、懸命に努力する人柄に対しての信頼感もある。それらが職場内をつなぐ求心力となる。▼外部に対する信もある。お客や取引先などからしっかりとした信用を得るのは何よりも大事なこと。最近の企業の不祥事は、その信用を裏切るもので、企業にとって致命傷となる。▼家庭と職場。それぞれが依拠すべき徳目を見失うと、最悪の場合、家庭では家族間の殺害や虐待などの悲劇を招き、企業では倒産という崩壊に見舞われる。そうならないためにも、家庭は愛、職場は信を見直さなければいけない。「では」と思う。地域における徳目は何か。▼篠山市が再生計画を進めているように、地域では今、「再生」がよく語られる。再生とは、死にかけているものが生き返るという意味であり、再生が言われる陰には、地域の死という崩壊への危機感がある。地域の最大の徳目は何かを問わなければいけない。 (Y)

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